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当プロダクションで編集・翻訳協力を担当した『サイエンス超簡潔講座 合成生物学』(ニュートンプレス)が2021年3月31日に出版されました。
「合成生物学」はあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、これから世界を変えていくかもしれないと言われている学問のひとつです。本書は「合成生物学」の入門書になっており、文理系問わずこれからの時代を生きていく人々におすすめしたい著書です。今回は少し本書について少しご紹介。
本書について:合成生物学とは?
「合成生物学」とは、人工的な設計によって新しく生命システムをつくり出す学問です。近年活発に議論されているバイオテクノロジー分野のひとつになります。イギリスでは特に注目されており、先端材料、農業科学、ビッグデータ、エネルギー貯蔵、再生医療、ロボット工学、人工衛星に続く有望な現代科学分野として八大技術に挙げられるほどです。
「合成生物学」は、さまざまな環境問題やエネルギー問題の解決を担う可能性を存分に秘めています。科学者のみならず、経済学者や政府までもが社会の生産を一変させる可能性があるだけあり、理系分野に止まらず今度知っておくべき学問のひとつになってきそうです。
本書では、バイオテクノロジーの基礎から、DNAを読み書きする方法、環境問題や医療問題との合成生物の関連性、商業利用への未来や課題などさまざまな観点から合成生物学について1からわかりやすく書かれています。また、「生命をつくり出す」という人類の倫理的な問いにも深く踏み込んでいるので、「哲学」的テーマとしても興味深い内容です。
プチ編集後期:コロナ禍だからこそ読みやすい
本書の興味深いところは、コロナ禍以前に書かれたものの、新型コロナウィルスの台頭によって読みやすさが増していることです。これまで文系脳だとなかなか知り得なかった「RNA」や「サイトカインストーム」などの単語が登場するため、少し身近な分野のように感じられます。また、コロナ禍を予期していたかのようにパンデミックやワクチンについての記述も触れられています。合成生物学を応用すれば3ヶ月かかるワクチン開発も100時間でできてしまうといった内容も非常に興味深いです。
アートの世界にも合成生物学取り入れられているのが意外な発想でした。生物学とアート自体の結びける発想がこれまでありませんでしたが、synbio-art(合成生物学アート)なるものが存在しています。要するに無生物の化学物質ではなく、生きた細菌を使った芸術です。医療や経済だけでなく、文化にまで影響を及ぼす科学分野には今後も目が離せません。
監修を務めていただいた慶應義塾大学の藤原慶先生には、建設的なご意見をいただきながらスムーズに編集作業を進めることができたことを改めて感謝申し上げます。
もくじ
第1章 解析生物学から合成生物学への道
第2章 合成生物学の現場
第3章 合成生物学と環境問題
第4章 合成生物学と医療
第5章 工学のための合成生物学
第6章 基礎研究のための合成生物学
第7章 生命をつくりだす
第8章 文化的影響
発売日:2021年3月31日
出版社:ニュートンプレス
著者:ジェイミー・A・デイヴィス
監修:藤原 慶
訳者:徳永 美恵
編集、翻訳協力:編集プロダクション雨輝