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当プロダクションで編集・翻訳協力を担当した『「恐怖」のパラドックス』(ニュートンプレス)が2021年3月31日に出版されました。
専門知識がなくとも読むことができる本書は、心理学に興味がある人をはじめ、人間の本質や世の中の矛盾に敏感な人には特におすすめです。監修いただいた心理学部の教授も絶賛するほどの内容になっています。心理学を学び尽くした人にもぜひ読んでいただきたい1冊です。少し本書についてご紹介します。
本書について:「恐怖」は必要なのか?不要なのか?
冒頭は、著者の体験談から始まります。著者が息子と海に遊びに行ったときのこと。息子は大波に飲まれ、腕が骨折してしまい、2人とも恐怖と苦痛を経験します。しかし、2人ともその大波が押し寄せる直前には不思議と「高揚感」を感じていたと言うのです。「恐怖のそばには喜びがある。それはなぜなのだろうか?」と興味深い問いかけから本書は幕を開けます。そして、精神分析の祖・フロイトや心理学者・ユングの研究や著者が実際にカウンセリングした実体験から「恐怖とはどこから来て、私たちをどう突き動かしていくのか」に迫っていきます。
不安に悩んでいるにもかかわらず、その不安が仕事の活力となっているがゆえ、不安が消えると不安を覚えてしまう矛盾したような症例。恐怖があったからこそ、人間は想像力を膨らませ、発明と進歩を繰り返してきた歴史。私たちが、苦しめられ、拭い去りたいと感じる「恐怖」がもつ本質的な役割についても掘り下げられます。
プチ編集後記:コロナとワクチンのパラドックス
光や正義を求めることで人々は暗闇にハマっていくと本書には書かれています。「安心を求めるために恐怖を排除するのは本当に正しいことなのか?」というのは深い命題です。たしかに、ダイエットを追及するあまり必要以上に体型や体重が理想から離れると怯える人もいれば、宗教や自己啓発で自身を完璧に追い求めようとすればするほど間違ったことで自分を貶める人もいます。古代から現代まで人々を苦しめてきた「恐怖」の捉え方や向き合い方が、本書に出会ったことで、少し変わったような気がしました。
バクテリアを根絶やしにしようと人類がペニシリンを開発した結果、バクテリアをさらに強力な菌にしてしまう話が本書には触れられていますが、これは奇しくも今の世の中に通じることです。新型コロナウィルスの排除に躍起になった結果、感染力の強い変異ウィルスを誕生させています。これが誤った行為だとは言えませんが、「恐怖」から逃れることが本当に正しいことなのかを一度本書を読んで考えてみてはいかがでしょうか?
監修を務めていただいた清水寛之先生と井上智義先生には言葉の選定をひとつひとつ親身になってご相談いただくことができました。原文は小難しい表現も多くありましたが、訳者と監訳者の先生方のおかげで多くの人たちに伝えられる良き本になったと感じおります。関係者の皆様のご協力には改めて感謝申し上げます。
まえがき 脅威としての恐怖
第1 章 私たちのなかに棲む恐怖
第2 章 安全警報システム
第3 章 恐怖と想像が出合うとき
第4 章 不安の先の未来
第5 章 自らの心の恐怖
第6 章 想像できますか?
第7 章 想像革命
第8 章 恐怖のパラドックス
第9 章 カメ
発売日:2021年3月31日
出版社:ニュートンプレス
著者:ファンク・ファランダ
監修:清水 寛之、井上 智義
訳者:松矢 英晶(編集プロダクション雨輝)
編集協力:編集プロダクション雨輝