編集・ディレクション

クライアントが原因でライターが抱えるストレス5選【対策法の解説つき】

仕事をしていてストレスを抱えない人の方が珍しい世の中です。特にライター業は、1人で作業ですること多く、相談する機会が少ないため、ストレスに晒されがち。そのストレスは、取引先(クライアント)である編集者への不満から起きるものが多くを占めています。今回は、多くの人に快適な仕事をしやすい環境づくりをしてもらうべく、ライターとクライアント双方の視点から、ストレスの原因とその対策方法を5つに絞ってお伝えします

1.レギュレーションが曖昧な割に要求が細かい

ライティング業界では、特に明確なレギュレーション(規定)がないまま「なんとなく」仕事が進んでしまう場合があります。その結果、編集側としては意図していたものとは違う原稿があがってしまい、結果的に細かい修正が多くなってしまうことも。「そこまで細かい指示があるならなぜ最初に言ってくれなかったのか」とライターからしたら理不尽極まりない状態です。

ライター側の対策

仕事欲しさから、ろくに詳細も確認せず、そそくさと仕事を始めた結果、理不尽な細かい修正指示を受けたとしたらライター側にも非があります。仕事を受ける側であれば、相手の決まり事や意図していることをできるだけ最初の段階で汲み取る努力をするべきです。結果的に修正の工数が増えてしまう減らす努力をすることもライター業務の一環といっていいでしょう。

 

止むなく曖昧にも仕事を進めなければならない状況も当然ながらあるでしょう。しかし、何も言わないまま曖昧に仕事を始めてしまうと、クライアントの意図にそぐわないことが発生するたびに、ライターの責任にされたり、次から次へと理不尽な要求をされたりするリスクが生まれます。そのリスク回避のためにも、「協議していきながらすり合わせていく」「修正の回数は○回まで」「〇〇の修正は対応できないかもしれない」などの自分なりの線引きを早い段階でしておくといいでしょう。

クライアント側の対策

「なんとなく」の指示で、卒なく原稿掲載まで運べた経験はあるかもしれません。ただしそれは、ライターの理解力の高さやたまたま感覚が合うライターに助けられただけであり、いわゆる運が良かっただけです。曖昧なまま案件をはじめてしまうと、ライターだけでなく、編集側にも負荷がかかります。自分の業務を少しでも楽にするためにも、できるだけ最初の段階で具体的な規定は設けておきましょう。

 

社内や上司の判断でどうしても明確にできないことはあります。そのような場合はあらかじめ、案件を進めていくなかですり合わせていく旨や修正が発生してく可能が高いことなどをライターに伝えておくべきです。そうすることでライターは心構えができるので、「思っていた案件と違った」という不満やクレーム回避につながります。

2.予期せぬ追加指示(レギュレーションの追加)

「これって追加でお願いできますか?」の指示でよくありがちなのが、文章の追加、文字装飾、追加の画像挿入など。あらかじめ取り決められている事項あればよいものの、レギュレーションにも最初の指示にもなかったのにもかかわらず、負荷のかかかる作業を押しつけられるライターには不満とストレスが募っていきます。けれども、案件の途中であることや立場的に強くなれないライターは泣き寝入りしがちです。そのため、クライアントもライターが不満を抱いていると気が付きにくいケースのひとつでしょう。

ライター側の対策

条件がよくならないのにもかかわらず、負担が増えるルールの追加は、ライターとしては非常に悩ましい状況です。下手に単価の交渉や対応の拒否を提案すれば、クライアントから嫌われて仕事をもらえなくなるかもしれないという恐怖からなかなか意見も言えないでしょう。実際に仕事がなくなるリスクもあるので、泣き寝入りするのもひとつの手段です。

 

ただし、負荷を抱えたなくないのであれば、きちんと交渉してみましょう。また、ふだんからクライアントとこまめにコミュニケーションを図ったり、満足されるようなパフォーマンスを発揮したりすれば交渉もしやすくなります。結果を出して必要な人であると思ってもらえれば、交渉しても仕事を失うリスクはぐっと減るでしょう。

クライアント側の対策

追加指示が発生する可能性がある場合は、案件を依頼する時点でライターに伝えておきましょう。「このような指示が追加されるかもしれないけれども、この単価でお願いします」という前提条件のもと仕事を開始することで、ライターの不満はぐっと減るでしょう。そもそも単価に対して追加依頼が発生するのが嫌であればライターは最初の時点で仕事を断るはずです。

 

情報を隠して無理に仕事を進めることは、むしろトラブルのもとです。また当然ながら、予期していなかった追加指示を行わければいけないこともあるでしょう。その場合は、平身低頭なコミュニケーションを心がけたり、単価をあげたりとライターに誠意を見せるべきでしょう。横柄な態度をとっていると結果的にライターが離れたり、クレームを受けたりと余計なコストが発生することになるので謙虚さは大切です。

3.感情的・不明確な修正指示

原稿に対して、クライアントが行うフィードバックや修正依頼のコメントが曖昧なケースがよくあります。論理的な文章を求める割に、発注側の指示が感覚的でわかりづらいという理不尽さを覚えるライターもいるでしょう。発注者も人間なのでライターの不出来さにイラッとすることもあるかもしれませんが、仕事で感情ありきの指示出しをしてしまえば、良いコンテンツづくりからは遠のいてしまいます。

ライター側の対策

修正指示の意味が理解できないことをクライアントには伝えづらいかもしれませんが、恥を忍んででも確認しましょう。きちんと理解しないまま修正すれば、意図から外れた修正になってしまい、クライアントから読解力のないライターなのかと思われてしまう可能性があります。

 

できるだけコミュニケーションを図って相手の意図を汲み取るようにして、継続していくうえで修正が減らせるように努めましょう。また、修正依頼がくるということは、レギュレーションを読み込めていない、初期段階ので確認不足が原因かもしれません。ライターの仕事としての落ち度もなかったかも見直してみてください。

クライアント側の対策

修正しなければならない文章が生まれるきっかけとして、最初にクライアントが出す指示の仕方が問題の可能性あります。そもそも編集とは、読者に理解してもらうコンテンツを生み出す仕事です。そのため、「自分がわかっているから他人もわかるだろう」感覚を持っていたら編集者としてはあるまじき行為です。

 

ライターに理解してもらえなければ、読者にも届けたいものも届けられません。良きコンテンツをつくりたいのであれば、ライターへ理解してもらえるようできるだけ具体的に論理立てて説明してください。ライターの理解が深まれば、結果的に業務効率が上がって編集作業も楽になっていきます。

4.メッセージが高圧的・暴力的

「お金を払う」という立場に甘えて、偉そうな態度を取る発注者がたまにいます。そのような相手に対してライターが強いストレスを感じるのが、高圧的な言動です。メールでなく、チャットツールを使っている場合は、会話が良くも悪くもラフになりがちなので、鋭さをもった言葉はライターに大きな傷を生み出すことがあります。状況によってはやむない場合もあるかもしれませんが、仕事であることをわきまえた言動を試みるべきです。

ライター側の対策

言動というのは人間性が出てくることや、そもそも恐怖を与えてくる人間に反論することが難しいことから、相手に改善を求めるのは難しいかもしれません。まずは、問題視している相手以外にもやりとりできる編集者や上司などに直接相談してみてください。それでも難しい場合は「フリーランス・トラブル110」のような組織に相談してみるといいでしょう。あまりにも酷い言動が見られた場合は、真っ先にスクリーンショットなどで証拠を確保しておきましょう。あとから面倒になりかけたときに、証拠は大きな武器になります。

 

また、感情的に行動に起こす前には、一度冷静な思考になってください。もしかしたら、自分が思っている上に相手には攻撃的な意図はないかもしれません。電話やzoomなどで直接話すことで、自分の思い過ごしだったなんてことに気がつく可能性もあります。あれこれ騒ぎ立てる前に、相手と声のコミュニケーションを試みてはいかがでしょうか。

クライアント側の対策

ライターが不出来な場合に思わず感情的な言葉を使ってしまうことがあるかもしれません。しかし、自分では思っている以上に相手を傷つけてしまっていることもあります。チャットなどのテキストでのコミュニケーションは感情が見えづらい分、意図せずとも高圧的な言葉として捉えられてしまうケースが発生しやすくなります

 

不満があって感情的になりかけたときには、電話やzoomなどのツールで声を通して冷静に伝えることを心がけてみください。「チャットだと怖い印象だったけど思ったよりも良い人だった」なんてことはよくあることです。通話のコミュニケーションによってライターのモチベーションがあがり、質の向上につながることもあります。

5.提案内容が全く吟味されないとき

少しでも円滑な業務を試みたり、クライアントの役に立ったりしようとライター側から率先して意見や提案をする場合があります。しかし、「確認します」「検討します」の一言だけで、その後何も音沙汰がなく、やる気を削がれた経験のあるライターは多いでしょう。直接的な業務に関係がなければ、忙しいクライアントとしては失念しがちな項目かもしれませんが、提案したライター側は覚えているものです。せっかく提案したのに何も返答がなければ、ライターのモチベーションが下がり、結果としてパフォーマンスが落ちてしまうなんてこともあるかもしれません。

ライター側の対策

自分の意見や提案が無視されてしまうことは悲しいことです。ただ、クライアントにはクライアントの都合があるということをもう少し想像しましょう。単に忙しすぎて忘れているだけかもしれません。社内の確認に時間がかかっているだけかもしれません。

 

もしかすると、クライアントからしてみると「ありがた迷惑」な提案だったなんてことがあるかもしれません。業務に関係する内容でなければ、焦らずに返答を待ちましょう。時間が経っても返答がない場合は、自然なタイミングで「あの提案の件ってどうなりましたか?」と丁寧に聞いてみてるのがいいでしょう。

クライアント側の対策

何事も熱心に提案してくれるライターは貴重です。業務の改善や企業の利益につながるような提案を無碍にしてしまうと、ライターのモチベーションダウンや出世の機会を逃すなど損失につながることもあります。意見や提案は、真摯に受け止めて、社内で検討するなり、編集部で話し合ってみたりしてください。

 

結果として提案が通らないことも往々にしてあるでしょうし、そもそも検討できない事項かもしれません。提案してくれたライターには、結果の良し悪しにかかわらずその内容とともに、誠意と感謝の意をきちんと伝えください。少しでもライターが役に立ったと感じることができれば、モチベーションから仕事のパフォーマンス向上につながっていくかもしれません

ストレスの回避の秘訣はコミュニケーションにあり

ストレスの多くは基本的に人間関係にあります。人間関係が良好であれば、不満は生まれづらいものです。執筆・編集業の場合は一人でもくもくとパソコンの画面と向き合って仕事をすることが多いでしょう。画面越しに相手の顔も見えずに、感情が読めず、ちょっとした一言で苛立ってしまうことがあります。

 

感情に任せたチャットコミュニケーションを図ってしまった日には、関係が悪化の一途を辿りがちです。Zoomで顔を合わせたり、通話で声を交わしあったりと表情や感情が見えるようなコミュニケーションを図ることで大きかったストレスもあっという間に吹き飛んでしまうことがあります。良好で良質な仕事につなげるためにも生きたコミュニケーションをしてみてください。


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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