低学歴であれ高学歴であれ、自身の学歴を意識したことがない人はほとんどいないのではないでしょうか。テレビをつければ高学歴のタレントがもてはやされる番組はかつてより増えました。学歴よりも人柄や能力に重点をおく傾向は強くなったものの、依然として大卒以上でなければ採用しない企業も多く存在しています。
それほどこの国では学歴が社会の根底にあります。では、正社員ではなく副業やフリーランスとして活動しているWebライターに学歴は関係あるのでしょうか? 結論から言ってしまえば「関係あります」。それは、なぜなのか。その実態に迫っていきます。
社会ではなぜ学歴が重視されるのか?
中卒でも高卒でも優秀な人材はいます。高卒の経営者は珍しいことではありません。それでも企業は学歴を重視する理由は単純明快です。
「優秀である確率が高いから」
“優秀”の細かい定義は割愛しますが、大卒採用のメリットは以下の論法を当てはめることができます。
前提1 大学合格のためには勉強する努力や要領のよさが必要
前提2 受験や大学でさまざまな知識を手に入れた
結論 努力し学んだ人間はそうでない人間よりも会社に利益を生みやすい
コミュニケーション能力を重視するケースはかなりありますが、高卒と大卒で同じくらいのコミュニケーション能力がある人がいれば、当然ながら大卒が採用されやすいでしょう。
多数の入社希望が想定される企業の場合は、時間的な制約もあるので、できるだけ最初の段階でふるいにかけます。そこで、より優秀である可能性が高い大卒を条件に儲けたり、高学歴を優先的に残したりするのです。理にかなっている考え方なので、これからも学歴が軽視されることはまずないでしょう。
Webライターの世界で学歴は有利に働くのか
基本的は先ほど述べた確率論をもとに考えると、学歴はないよりはあったほうがよいことになります。Webライターの世界でもそれは同じことがいえます。ライター職の性質に沿って説明しましょう。
勤勉さ
ライターには「勤勉さ」が必要です。新人であれベテランであれ、新しい情報を掴むリサーチ力が必要です。情報や知識は宝くじように一攫千金は狙えないので、コツコツと努力する勤勉さが求められます。
受験を乗り越えるためにコツコツと勉強する行為は勤勉さなくしてはできません。高卒の場合は、理由を説明しない限り、この国では「勉強を放棄した」と理不尽にもレッテルを貼られることもあるくらいです。
論理的思考力
論理的思考力がなければ、相手に伝わる文章は当然書けません。文章は長くなればなるほど、論理は破綻しやすくなります。この力は、ライターにとって最重要な能力のひとつといっても過言ではないでしょう。俯瞰し、一貫した論理性を保った文章を生み出す力がなければライターには向いていません。
数学や国語は、計算力や読解力を身につける過程として論理的思考力を鍛えられる意義のある学問です。文系であれ、理系であれ、難関大学になればなるほど高い論理的思考力が問われる問題になってきます。センター試験から大学共通テストに変わったのも社会全体が論理的思考力を重要視してからです。
正確さ
ライターは読者に情報を提供する仕事でもあります。書かれた情報が間違っていれば読者からは当然信用されなくなるので、企業からすれば損失です。そのため、できるだけ正確を期する情報が求められます。例えば、Wikipediaを参考にする人がよくいますが、ライター業では本来NGな行為です。なぜなら、Wikipediaは誰もが書き込めてしまう性質上、信頼に足る情報をもとに記述されていない可能性があるからです。
ある程度偏差値が高い大学であれば、授業を通して何度も論文やレポートの書き方を学びます。確かな情報を記述するために、参考文献や参照元の選び方を知ることができるので、Wikipediaが参考対象外であることは最低限のリテラシーとして抑えているわけです。大卒でもなく若いライターはWikipediaを最強の百科事典だと思い込んでいる傾向があるので、編集者としては要注意のポイントになります。
高学歴がアダになる場合
高学歴が低学歴にすべてにおいて優っているかというと必ずしもそうではありません。Webライティング業界はやや特異な世界のため、高学歴をデメリットとして捉えるパターンも存在します。
高学歴と若さ
最近ではバイトがてらにWebライターとして活動している学生も増えています。若い人は社会経験が浅いことから以下の要素において、社会経験を積んでいる人よりは劣っている可能性が高くなります。
- 責任感
- マナー
- 精神面
Webライティングの世界ではリモートで仕事をすることが多いため、責任感が欠如しがちです。アルバイトよりもばっくれる確率は圧倒的に高いでしょう。依頼側からすればたまったものではありません。学生に依頼するのであれば、社会経験を積んでいる若い高卒のほうが責任感をもって仕事に取り組んでくれる思考になることもあるのです。
また、「高学歴=プライドが高い」とレッテルを貼られることは珍しくありません。若ければ失敗している経験も少ないため、その傾向はなおさら高くなります。プライドが高いと何かと言い訳をして業務が滞ったり、パフォーマンスを極端に落としたりする危険性がはらんでいます。高学歴だからプライドが高いと証明された研究はないようですが、人事や社会経験をした人の経験談をよく見聞きすることからも、少なからずレッテルは貼られる可能性があると認識しておいたほうがいいでしょう。
高学歴とWeb媒体
地頭が良い人は論文やレポートを論理的に書く力に長けているかもしれませ。しかし、論理的な文章を書けるからといって“読みやすい”とは限りません。学術書や専門書を読んだことがあればわかると思いますが、素人が読んでもなかなか理解できません。小難しい本を書く人たちは、理解できる人に理解してもらえばよといった心構えで文章を書いています。
一方でWebに掲載される文章のほとんどは、多くの読者に読んでもらうために存在しています。そのため、読みやすい文章が基本になってきます。自分の培ってきた知識や世界を中心に書いてしまうと相手に伝わりづらい文章になりがちです。
また、経済や金融といった知識を必要する業界の文章であればまだしも、美容やゲームといった万人ウケを狙う業界になればなおさら軽快で読みやすい文章を求められるので、頭が硬すぎる人には向いていないかもしれません。
高学歴なのに
Webライターの世界に限ったことはありませんが、低学歴にマイナスのレッテルを貼るのと同様、高学歴は期待されがちです。「高学歴はできて当然」と考えられることも多々あります。裏を返せば、その期待に添えなかったときには「高学歴なのに」というマイナスのレッテルに変換されてしまう怖さがあります。
また、そのケースとは逆に低学歴で高いパフォーマンスを出せれば、「低学歴なのに」と通常以上に高い評価を得られることがあります。低学歴は高学歴よりも失敗が許されやすく、また成功したときには必要以上の評価を得やすいメリットも秘めています。当然評価する相手によって価値観はことなるでしょうが、人間は本能的にバイアスにかかりやすいため、決して軽視できない考え方です。
実績を重ねれば学歴は不要
Webライターの世界でも学歴は関係きますが、必ずしも低学歴だから悪い、高学歴だから良いといった方程式が成り立つわけではありません。また、Webライターとしての経験が浅い場合は判断材料が少ないため、学歴に焦点がいきがちですが、実績を重ねていけば学歴に左右されることはほとんどないでしょう。
企業で転職活動をするときは職務経歴書紙一枚でその人の力が判断されます。そこに書かれた内容はあくまで文字であり、目に見える形で成果を伝えることが難しいものです。しかし、ライターの実績はWebや書籍など形として残るため、相手に能力を認めてもらいやすくなります。実績を重ねていけば学歴や肩書きに関係なく、結果が次の結果を生みやすい業界といえるのではないでしょうか。