編集・ディレクション

Webライターのバックれ・音信不通【原因・心情・傾向・対策】

Webでライティング関連の依頼をしたことがあるディレクターや編集者の多くは、ライターのバックれ・音信不通といったトラブルに直面したことがあるのではないでしょうか。

 

近年、ライター人口が増加していますが、それは必ずしも編集者やメディア運営者からすると必ずしも良いこととは限りません。気軽にライターになれる時代になってしまったからこそ、質の悪い仕事をする人も増えてしまいました。原稿の出来の悪さに嘆く編集者も少なくないかもしれませんが、文章の修正は最悪編集側で行うことができます。しかし、そもそもの原稿が送られてこなければ編集者もお手上げ状態です。

 

決められた期日までに投稿・納品ができなければ、自社の利益や取引先への信頼を損なってしまうことだってあるでしょう。今回は、そんなトラブルを回避するべく、ライターのバックれや音信不通を回避する方法をいくつかお伝えします。

 

ライター・編集者としての経験を通して

私自身Webライターとして活動をしていたときのこと。クライアントより、「ライターと急に連絡がつかなくなったので代理で執筆をお願いできないでしょうか?」と相談をもちかけられた経験が何度かあります。当時は特に意識していませんでしたが、編集者として活動しはじめたばかりのころは、ライターが途中で仕事を投げ出す問題に何度か直面してきました。

 

途中で断りもなしに仕事を投げ出す精神が当初は理解できず、ただ苛立ちを覚えるばかりでした。しかし、多くの人たちと仕事をするなかで、経験からライターの心情や性質などを理解できるようになり、今では仕事を投げ出されて困るという問題からは縁遠い日々となりました。むしろ、責任感があって安定してパフォーマンスを発揮してくれるライターさんと仕事ができストレスフリーの状態です

 

ライターにとって重要な能力は「文章力」と考えている編集者がいるかもしれませんが、今やそれだけでは決して足りません。Webライティング業界では、「何かあったら仕事から逃げる」精神をもったライターが想像以上に存在しています。この「逃げる」理由や心情を理解することができれば、トラブル回避の方法につながってくるのです。

 

文章力は目に見える経歴や実績からある程度測れるかもしれないけど、目に見えない心理的な情報はどうやって読み解けばいいの?

 

こんな声が聞こえてきそうです。では、その目に見えないと思っている部分を可視化していきましょう。

ライターが音信不通になる原因・心情

きっかけが何であれ、「音信不通」という選択を取る人の心情は共通しています。「気まずさ」や「叱咤(しった)」からの逃避です。責任感が欠如していたり、精神的に問題を抱えていたりする人は、自分の非と向き合えなくなってしまうことがあります。その結果として、楽な状況に自分を置いて自己防衛という手段を選びます(※)。ただし、「音信不通」という選択を取るまでのきっかけはさまざまです。以下に、音信不通になってしいまういくつかのパターンをご紹介しておきます。

想像していた仕事と違っていたパターン

実際に仕事に取り掛かってみたら想像した以上に負荷がかかってしまう場合です。この「負荷」には主に2種類あります。1つめは、難易度が高い案件に直面したとき。ライターの知識や技量では手にを得ず、結果的に匙を投げてしまうパターンです。2つめは、費用対効果の悪い仕事に直面したとき。思っていた以上に労力がかかってしまい、単価に見合わないと判断した結果、無責任にも仕事を放棄してしまうわけです。

自己管理ができないパターン

できると思って始めた仕事でも、他の仕事のスケジュールに追われてしまい、納期を守れないライターがいます。そもそもスケジュール管理以前に、あと先考えずに「できます!」と言って自分の首を絞めてしまう人が存在します。このような人は、マルチタスクやマネジメントのスキルが低いかもしれませんが、人によってはものすごいパフォーマンスを発揮することがあるので、仕事の仕方によっては大きく好転する可能性もあることも頭の片隅に入れておいてください。

精神的な問題を抱えているパターン

実は、仕事に支障を来たす可能性がある精神的な問題(※)を抱えているライターは少なくはありません。歴代の文豪たちの生き方を見てみれば、筆を持つ人には珍しいことではないのかもしれません。なかには、社会に適応することができないから、在宅にて自分のペースで仕事ができるWebライターを選んでいるケースもあるため、精神的な理由から仕事が困難になってしまう理由も頷けるでしょう。

身内で問題が起きたパターン

ライターの身内に何かが起きて仕事ができないこともあるでしょう。本来であれば、やむなく仕事ができない理由をできるだけ早めに伝えるのがマナーですが、そのような常識がなかったり、どうしても余裕がなかったりすることから、結果的に時間が過ぎて気まずくなって連絡を途絶える方向に向かってしまいます。

※精神的な問題から起因する逃避行為は、さまざまな背景があるため、一概にライターに責任があるとは言えません。本来は問題なく仕事ができていたとしてもクライアント側の対応で精神的に追い詰めてしまう事例も存在します。

音信不通になる傾向のあるライターの特徴

音信不通になるライターの原因がわかったとしても、事前に傾向を理解しておかなければ、根本的なリスク回避にはつながりません。一例ではありますが、音信不通になりやすいライターの傾向とその理由を解説します。

社会経験が浅い

社会経験が豊富であれば、仕事の仕方やマナーを大抵心得ています。責任をもって根気強く業務をこなす力がある可能性も高くなります。逆を言えば、社会経験が浅ければ、それらが身についていないことが往々にしてあるのです。また、社会経験の浅さは「若者が嫌になったらすぐに会社を辞める」問題と通じるところがあります。会社が自分と合わなかったからすぐに辞めて、好きな時間に自由に仕事ができることが、若くしてフリーライターになった理由だったらどうでしょうか。ライター業務でも「合わなかったら投げ出す」精神は変わらないとも言えるでしょう。

レスポンスが遅い

レスポンスが遅い人は、責任感に欠ける傾向にあります。状況にもよりますが、レスポンスが早ければ、それだけ業務がスムーズに進行できます。遅ければ遅いほどプロジェクトが滞る可能性がでてきます。シンプルなことですが、責任感が欠如している人は、編集や運営側の気持ちを汲み取ろうとせず、自分のペースだけで返信をしがちです。結果的に自分本位となって納期を落としたり、音信不通になったりするリスクは高まります。

精神的な理由で退社経験がある

過去に精神的な理由で仕事ができなくなっていたとすれば、再度同じ理由で仕事ができなくなる可能性があります。症状が抑えられていたとしても、完全に克服できていない限り、依頼主の対応によって再発することもあります。悪気のない厳しめのフィードバックがライターを追い詰めることもあるのです。精神的な問題は、仕事ができなくなるリスクを秘めていますが、決して仕事の能力値が低さとイコールにはなりません。関係の築き方によっては大きなパフォーマンスを発揮する人もいます。

金銭面に余裕がない

金銭的に苦しい状況だと心に余裕がなくなり、人間は本来のパフォーマンスを発揮しづらくなります。当然のようにできたこともできなくなり、結果的に金銭的な頼みの綱である仕事すら無碍(むげ)にしてしまうという矛盾のような行動すら起こすこともあるのです。また、お金最優先で生きていると、他に稼げる仕事を見つけたときにライティングの仕事の単価が低ければ投げ出されてしまうこともあります。そもそも金銭に余裕がないことから副業としてライター業務をしている人も珍しくありませんので、可能であればライターの生活状況も推察してみるといいでしょう。

音信不通によるトラブルを回避するための対策

これまでの傾向を加味すると、社会経験が浅く、金銭面に余裕がないレスポンスの遅いライターは特に要注意となります。とはいっても、必ずしも事前に相手の状況がすべてわかるわけではありません。そこで、ライターの音信不通によるトラブルを回避する対策と方法をいくつかお伝えします。

依頼主として問題がないか俯瞰する

そもそも依頼主として問題のある発注やコミュニケーションをとっていないか俯瞰してみてください。自分が良かれと思って仕事をしていたとしても、相手からは「ブラックで仕事をする価値もない非常識な企業」と思われているかもしれません。もちろん、音信不通は仕事として許されるべき行為ではありません。ただ、自動車事故がすべて10対0で処理されないのと同じく、被害を被った側にも非がある可能性が十分にあることを冷静になってみましょう。

クラウドソーシングのシステムを活用する

クラウドソーシングを活用するのであれば、評価が高く、こなした案件数が多ければ安心して依頼できる可能性が高くなります。プロジェクトの締結は音信不通のリスクを減らしてくれるでしょう。ただし、クラウドソーシングは何度もアカウントを作り直すことができることから、必ずしもシステムで守られるわけでないことも覚えておいてください。

余裕のあるスケジュールを組む

音信不通となるケースは、納期までに原稿が間に合わないことがきっかけとなることがほとんどです。できるだけ余裕のあるスケジュールを組めば、ライターも編集者も安心してパフォーマンスを発揮しやすくなります。スケジュールに余力があれば中間の進捗確認もできて、締め切り間近に何も出来上がっていないという状況も避けられます。最悪途中でライターが業務を遂行できなくなったとしても、対策を打ちやすくなりますので、編集者にとってスケジューリングはスキルのひとつとも言えるでしょう。

採用の前にレスポンススピードを確認する

レスポンススピードと責任感の関係性について触れましたが、ライターを未採用の段階であれば、事前にやりとりを繰り返すといいでしょう。編集者にとってストレスのないスピードでやりとりが事前にできていれば少しは安心できるはずです。クラウドソーシングを使う場合に覚えておいて欲しいことがあります。それは、一定時間内にレスポンスをしなければ評価が下がる仕組みが導入されているため、やむなく早めのレスポンスを心がけている人がいるということです。チャットツールに移行したらレスポンススピードが落ちたなんてこともありますので注意してください。

こまめなコミュニケーションを心がける

会社を辞める一番の理由が「人間関係」です。つまり、人間関係の構築が業務に大きく関わってくるということになります。音信不通は、自己防衛のためです。つまり、依頼主から恐怖や威圧感を感じたからかもしれません。良好な人間関係が構築されていくと、安心感や相手への責任感も強くなってくるものです。また、顔を合わせるか合わせないかでも信頼度は大きく変わってきます。定期的なZoom会議などを心がけて、ライターとの距離を縮めてみるのもひとつの手でしょう。

他人は変えられない、自分を変えるしかない

音信不通やバックレが起きていることは、決して黙認できることではありません。しかし、編集者はライターの行動を自由にコントロールできるわけでもありません。嘆いていても何もはじまりません。できることは自分の考えや行動を変えることだけです。いかに、音信不通となるような人を採用しないような手段をとるか。いかに、相手に気持ちよく仕事をしてもらえるような環境づくりに努めるか。自分のなかでの最善策を突き詰めていけば、自ずと気持ちの良く安定してパフォーマンスを発揮できる仕事につながっていくでしょう。

 

※本記事ではお伝えした内容はあくまで傾向であり、必ずしも当てはまるわけでないことをご了承ください※


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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