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引用や参考は適切?情報リテラシーがなければ仕事も私生活も損をする

近年、不確定な情報やフェイクニュースを信じ込む人が多く、情報リテラシーの低さが世界各国で問題視されています。日本も例外ではありません。むしろSNSへの依存度が高い日本人こそ情報リテラシーの低さを露呈しています。特に新型コロナウィルスの感染拡大問題や2021年のアメリカ大統領選では、国内でも情報の発信者や発信元の信憑性を意識せずに誤情報や根拠に欠ける内容を素直に信じ込み、拡散する状況がTwitterやブログで数多く見受けられました。

 

誤った情報が拡散されてしまうのは、「真実味がありそうだから」「多くの人が信じているから」「親しい人が言っていたから」と感覚的な理由がほとんどです。根拠や科学に基づいて進歩と発展を繰り返してきた社会とは真逆の発想になります。社会経験のない子どもであればまだしも、書くことを生業にする人や情報発信を仕事にしている人まで無自覚に誤情報を信じ込み、無責任に拡散するという過ちを犯しています

 

情報化社会において正確な情報を手に入れることは重要なことです。逆に情報リテラシーがなければ、教養のなさやプロ意識の低さを露呈しすることになり、仕事や私生活に影響を及ぼす可能性もあります。この機会に、あなたがどれだけ情報リテラシーをもって生きているか確認してみてください。

情報リテラシーとは?

 

「literacy」は本来「読み書き能力」「識字率」の意味で使われていますが、日本では「特定分野の知識を正しく理解する力や、それを活用する力」といった意味で使われることがほとんどです。「〇〇リテラシー」と複合語で使われることが多く、一例としては次のような言葉があります。

 

  • メディアリテラシー:新聞やテレビ、インターネットなどのメディアの情報を精査して正しく理解し活用できる力。
  • インターネットテラシー:インターネットをうまく活用して情報を収集する力、SNSを正しく使いこなす力。
  • コンピューターリテラシー:パソコンをスマホなどのコンピューター関連危機やソフトを使いこなす力。
  • ITリテラシー:インターネットテラシーやコンピューターリテラシーとほぼ同義。Webのマーケティングや解析など専門的知識の理解と活用する力を指すこともある。
  • 金融リテラシー:保険や株などの金融に関する正しい知識とそれを活用する力。先進国のなかでも特に日本は低いとされている。
  • ヘルスリテラシー:医学や健康に関する正しい知識とそれを活する力。誤った知識は生命を脅かすことになりかねない領域のため、薬機法などの表現や表記に関する法律が存在する。

 

さまざまな分野でリテラシーは存在しますが、「情報リテラシー」は広義に「情報を正しく理解し、活用する力」と捉えておけば問題はありません。上記のさまざまなリテラシーの意味合いを含むことが多く、特に「メディアリテラシー」「インターネットリテラシー」の意味合いが強調されやすいことを念頭においてください。なお今回は、多くの仕事や私生活にかかわる観点から情報リテラシーを掘り下げていきます。

1.「参考サイト・文献」から情報リテラシーを考える

 

ブログ、記事、レポート、論文など「書く行為」には情報や知識が伴います。無から有は生み出せないため、何かを書くにしても私たちは学び、経験する必要があります。体験談からなるものであれば、その事実を淡々と書けばそこに嘘はありません。けれども、自らが体験していない客観的事実を文字に起こし、誰かに伝える場合は、それが正しい情報かどうか確認しなければなりません。

 

水は0度で氷になるような普遍的な常識であれば確認はいりませんが、大多数の人が知り得ないことは情報元が肝心です。もし、記載元の情報が間違っていれば、それを伝えてしまったあなたも嘘をつきの烙印を押されかねません。実際に医療メディア「WELQ」は、誤った情報をもとに医療・健康関連記事を多数掲載していたことが理由で2016年に閉鎖しています。事実を確認するためには、本やWebを活用しますが、あなたはどこの何を参考にしていますでしょうか?

Wikipediaは百科事典ではない

Wikipediaは「百科事典」ではなく、「百科事典っぽいもの」になります。それは、誰もが編集できて、書き換えられてしまうからです。専門的な肩書きがある人であればまだしも、匿名での書き込みができるため、Wikipediaは信憑性のないサイトになります。例えば、今この瞬間でもWikipediaに書かれた「ドラえもん」の情報を「過去から来たイヌ型人間」に書き換えてしまうことも可能なのです。

 

このような事実はある程度の教養があれば、常識とされている知識なので、ライターや編集者がWikipediaを参照元として記載してきた日にはリテラシーを疑われることがありますWikipediaは便利なので趣味で知識を得るにはいいかもしれませんが、プロとして利用する場合には恥をかく可能性が高いので注意しましょう。

個人やサイトの肩書きに注目する

栄養についての知識を得る場合、栄養について勉強にしている主婦のブログよりも医師や栄養学の専門家が発信している情報を信頼すべきなのは当然だと理解できるでしょう。ただ、これが栄養の情報をまとめているサイトの場合どうでしょうか。たくさんの栄養情報がまとめられているという理由だけで信憑性が高いに違いないと認識してしまったらアウトです。

 

そのサイトを運営している企業が栄養の専門性を持ち合わせていなかったり、書かれている記事に専門家の監修が入っていなかったりする場合は参考に値しません。どのような肩書きの企業や個人が情報を発信しているか意識しなければ誤った記述になる可能性は高まるので注意です。

一次情報をたどる

例えば、あなたはある映画の公開年を知りたかったとしましょう。有名な映画監督がその作品について「私が過去につくった映画は1972年に公開された」と発言しているインタビューが雑誌に掲載されいたとしたら、これは信頼に値する情報と言えるでしょうか? 答えは「NO」です。なぜならば、監督が間違って発言していたり、編集者が誤って記載していたりする可能性があるからです。

 

映画監督は映画をつくるプロであり、情報のプロではありません。当然、雑誌の編集者は事実確認を行う必要があります。しかし、あくまで記載されている情報は一次情報元にした二次情報にすぎず、私たちは編集者が一次情報を本当に確認したかは知ることができません。そのためこの場合は、一次情報である映画の配給会社の公式情報を自分の目で確認するべきなのです。二次情報ではどうしても確証が持ちづらいので、一番信頼に値する一次情報をたどるようにしましょう

2.「著作権」から見る情報リテラシー

 

悪気がなくとも法に触れてしまいがちなのが、著作権がらみの問題です。文章であれ、画像であれ、著作物には著作権という法律が適用されます。何気なく他人の文章の一部や画像を使用したりしたとしても法律に反してしまう可能性があるため、正しい知識を身につけておかなければなりません。

著作権法第32条「引用」

特に書きものの場合は文章の引用はよく行われます。Webでの記事制作においては画像の引用も多数見れらます。執筆や編集に携わる人は最低でも、「引用」に関連する著作権法第32条だけでも抑えておきましょう

公正な慣行に合致すること,引用の目的上,正当な範囲内で行われることを条件とし,自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができる。同様の目的であれば,翻訳もできる。国等が行政のPRのために発行した資料等は,説明の材料として新聞,雑誌等に転載することができる。ただし,転載を禁ずる旨の表示がされている場合はこの例外規定は適用されない。

著作物が自由に使える場合 | 文化庁「引用(第32条)」

「正当な範囲内で行われることを条件とし」の部分が曖昧でわかりづらいのですが、ここに関しては過去の判例からある程度明らかになっています。

引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいい、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物間に前者が主、後者が従の関係があることを要する

裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan

つまり、引用は自分の制作物をサポートするサブ的な役割であればOKということです。引用がメインになってしまう制作物は法に触れます。たとえば、画像や動画を少し説明するような記事は要注意です。記事の場合はあくまで、自分で書いた文章が主役にならなければいけません。

著作権法第27条「翻訳権・翻案権」

引用でなくて、内容のまとめならいいのかと思った方も注意です。「要約」は、著作権法第27条「翻訳権・翻案権」(著作物を翻訳し,編曲し,変形し,脚色し,映画化し,その他翻案する権利)の侵害に当たる可能性があります。文化庁のページには以下のように記されています。

要約は、著作物の内容をある程度概括できる程度にした著作物のことをいいますが、この要約を行う行為は、一般に翻案権(第27条)が働く行為とされており、著作権者の了解なしにはできません。ただし、ごく簡単に内容を紹介する程度の文書であれば、著作権者の了解は必要ないと考えられています。

著作権なるほど質問箱 – 文化庁

最近よく見かける「本の要約」を行っただけの記事や動画は、訴えられている可能性を十分にはらんでいることになります。著作権法を知らずして、不用意に他の人の作品を利用することは危険です。ライターや編集者とくに、しっかりと知識を身につけてから仕事をしましょう。

3.「SNS」から見る情報リテラシー

 

TwitterをはじめとしたSNSでは、日々さまざまな情報がせわしなく流れてきます。近頃では、中身を読まずにタイトルだけで記事を拡散する人もいるというのですから驚きです。ボタンひとつで無数の人にお気に入り情報を拡散できる便利さの裏には、危険もはらんでいます。

 

2020年には、「新型コロナウィルスにこれが効く!ので拡散希望」といった情報拡散が目立ちました。「〜大学の教授が言っていましたが」と一見信憑性があるかのように書かれていることもありましたが、事実無根や無根拠であるケースもちらほら。「それっぽい」だけで、噂やフェイクレベルの情報がSNSには蔓延してしまっているのです。

 

権威ある人物による情報であれば、本人の直接的な発言や記述を元にするべきです。少なからずどこのだれだかわからない素人が発言元であれば、そこに書かれている情報が本物かどうかリサーチするのが最低限のリテラシーというものです。

4.「メディア」から見る情報リテラシー

 

テレビをはじめ新聞社などのメディアが発信する情報は、基本的には確かな根拠をもとに発信されています。しかし、情報の受け取る人の気持ちを汲んでいるかというと、必ずしもそうではありません。メディアは必要以上に人々を不安や恐怖にさらしている場合もあるのです。

 

テレビの情報番組では、「新型コロナウィルス感染者数何日連続1000人越え!」「何曜日最多感染人数!」といったようなテロップとともに報道がなされることがあります。感染人数が多さに怯えることは間違っているとは言いませんが、何を根拠に怯えるかが重要です。人数で怯える人の多くは、過去の感染者数と比較している場合はほとんどです。新型コロナウィルスの感染者はPCR検査を元にして算出されています。つまり、PCR検査の人数によって感染者数は変動するわけです。

 

過去に感染者が少なかったのは単純にPCR検査数が少なかっただけかもしれず、実質的な感染者数はそこまで変わらない日もあるわけです。PCR検査数、陽性率、感染者数の数字を総合して判断しなければ、正確な情報にたどり着くことができず、ただただ表面的な数字に怯えるだけになります。メディアは情報を見てもらうことを商売としています。そのため、注目されない情報は小さく扱い、注目される情報を強調します。発信する側の意図を捉えれらないと冷静な判断ができず、誤った解釈や行動に結びつくこともあるので要注意です。

情報リテラシーを高めて人生を豊かに

 

リテラシーは、身につけている人からすれば当然の教養という感覚があります。悲しいことにこの社会では、リテラシーがない人は、それがある人から見下されたり、蔑まれたりすることもあります。判断力や理解力の乏しさから、情報に翻弄されて感情的になり、息苦しさを感じてしまうかもしれません。しかし裏を返せば、情報リテラシーの向上は、仕事や私生活を豊かにしてくれる可能性も秘めてるわけです。最後に情報リテラシーを高める5つのポイントを紹介します。

 

  • 冷静に物事を捉える
  • 情報元が信頼に足るものか確認する
  • 多角的な目線で物事を捉える
  • 本当に正しいかどうか疑ってみる
  • 発信者の意図を考える

 

情報の発信には責任が伴います。誤った情報発信はどこかでだれかを知らないうちに不幸にしているかもしれません。下手をすれば人を死に至らせるような情報すら存在します。情報リテラシーを身につけることは、自身の生活を豊にするだけでなく、他人や社会から不安を減らすことにもつながります。少しでも多くの人たちが自覚と意識をもって情報と向き合えることを願っています。

 

【参考元】

文化庁ホームページ

裁判所 – Courts in Japan


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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