編プロの仕事

編集プロダクション(編プロ)とは?Web媒体や出版社との関係は?

「編集プロダクション」とは、どのような組織か知っていますでしょうか?「編集」も「プロダクション」もなんとなくイメージはできるものの、具体的に説明できる人は多くないようです。私の場合は「Web」と「ライティング」を軸にしているので、この業界から遠い人にはなおさら混乱を与えるようです。

 

もしかすると、関連業界に勤めている人でも、「編集プロダクション」の業務をつぶさに理解している人は多くないかもしれません。少しでも多くの方に「編集プロダクション」について理解していただくために、その実態をお伝えします

 

プロダクションとは“つくりだすこと”

 

編集プロダクションは「編プロ」と略します。アニメや芸能のプロダクションとは性質が少し異なるものの、共通している部分もあります。いずれの「プロダクション」も「production」の意味ですが、この単語には基本は次のように訳します。

生産、製造、製作、制作

つまり広義には、「つくりだすこと」です。たとえば、手塚治虫が立ち上げた「虫プロ(虫プロダクション)」の場合は、テレビ局から依頼を受けて『鉄腕アトム』をはじめとするアニメーションの企画・制作を担っていました(現在の虫プロはやや体質が異なります)。つまり、アニメを“つくりだす”企業です。

 

この形態を汲んだ、『鬼滅の刃』を生み出しだ「Ufotable」や放火事件でも知られる「京都アニメーション」もプロダクションといえます。ただ、現在のアニメ業界では「アニメ制作会社」と呼ばれることが一般的のようです。

 

石原さとみや綾瀬はるかなどのタレントで知られる「ホリプロ(ホリプロダクション)」は、芸能プロダクションです。「文化をプロモートする”人間産業”」という企業理念を掲げている通り、タレントを”つくりだす”企業になります。

 

どちらも広くはプロダクション業務になるわけですが、「虫プロ」は「制作プロダクション」、「ホリプロ」は「芸能プロダクション」と区分されます。「制作プロダクション」とは広義に、映画、広告、音楽、出版などの分野で制作物をつくりだす業務を担う組織のことです。つまり、「編集プロダクション」は「制作プロダクション」の一種といえます。

 

編集プロダクションと出版社の違い

 

「制作プロダクション」は、自社から世の中に作品やコンテンツを発信することはあまりありません。そのため、情報を発信する力がある媒体をもった企業からの依頼を受け、そのニーズに合わせて作品やコンテンツをつくりだします。映像を発信するテレビ局から業務を受けて作品をつくるアニメ制作会社のように、従来の編集プロダクションは書籍や雑誌を発行する出版する企業から執筆や編集の依頼を受けてきました。

 

業務内容はその時々によって異なります。編集プロダクションが執筆業務のみを請け負うこともあれば、企画や編集といった根っこの部分から引き受けることもあります。出版社にあって、編集プロダクションにない仕事は、広告や販売関連の業務です。出版社は本を売って利益を得るため、販路の獲得や販売促進業務が必要となります。また、特に雑誌を発行する出版社であれば、収入源のひとつともなる広告媒体の獲得も重要な職務になるでしょう。

 

そもそも「編集」とは?

当然ながら「編集」とは、新聞や雑誌、記事などをつくってまとめあげることだけを指すわけではありません。イメージが掴みづらい人もいるかもしれませんが、一言で説明するのであれば「編集」は「素材をひとつにまとめる仕事」です。

 

雑誌の場合は「文章」「写真」「広告」などが素材に当たります。映像の場合は「動画」や「音声」、音楽の場合は「歌声」や「楽器音源」などが編集用の素材に当たるでしょう。つまり雑誌であれば、ライターが書いた「文章」、カメラマンが撮影した「写真」、営業が獲得してきた「広告」をひとつのページや本にまとめる業務を担うのが編集者となります。

 

編集プロダクションと広告代理店の関係は?

電通や博報堂で知られる広告代理店業界でも、「編集プロダクション」の仕組みはありますが、アニメ業界同様に「制作会社」と呼ぶのが一般的です。広告代理店から業務を受ける制作会社もあれば、広告代理店そのものが制作会社としての役割を果たすこともあります。

 

どちらもクライアントの要望で広告の制作やプロモートが主な業務になります。広告代理店の場合は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、Webと対象となる媒体が広いので、出版業界では求められない「撮影技術」なども必要です。

 

Web系編集プロダクションの役割と強み

 

自社で運営する媒体を「オウンドメディア」と呼びますが、Webメディアの世界では主に記事や動画などの情報発信型サイトを意味します。これはつまり、自社でブログや雑誌を出すようなイメージです。近年、業界に関係なくあらゆる企業がWeb上で「オウンドメディア」を立ち上げ、運営するようになっています記事制作のスキームを持たない企業が多いことからも、個人ライターや編集プロダクションに委託する傾向が高まっています

 

Webと紙媒体の性質の違いからも、Web系の編集プロダクションは上記に加えて「マーケティング性」を求められることが増えてきました。その理由は、Webメディア特有の「読んでもらう前」と「読んでもらった後」の障壁にあります。

 

「読んでもらう前」の障壁をクリアするために

出版社や新聞社と違い、オウンドメディアの歴史は浅く、読み物を読者に届けることスキームをもたない企業がほとんどです。また、読み物を販売して利益を上げる出版社などとは根本的に構造が異なり、記事を入り口として、広告や自社サービスで収益を得るケースが一般的でしょう。多くの読者をサイトに呼び込むために、記事の数で勝負する場合もあります。

 

それでも、オウンドメディアの増加や無料で記事を読める性質から、競合性は年々高まっています。そのため、記事を読者へ届けるまでのノウハウに頭を悩ませる企業は後を絶ちません。Webマーケティング専門の会社と組めば解決しやすいかもしれませんが、予算の都合から編集プロダクションにその知恵を求めてくるケースも珍しくはなくなっています。

 

「読んでもらった後」の障壁をクリアするために

書籍や雑誌は基本的に有料なので「読んでもらえた」時点で既に購入されており、企業に売上が発生しているので目的が達成されています。けれども、オウンドメディアの記事は無料であることから、何とか読んでもらえたとしても企業の目的が達成されていない場合が往々にしてあります。会社であれば、利益につなげなければなりません。

 

アフィリエイト広告なり、自社サービスなり、記事から商品購入に促す方針であれば、商品を買わせる仕掛けづくりの創意工夫が必要です。また、記事を読んでもらうだけでなく、SNSなどを通じて拡散してもらい、より多くの読者を獲得する努力をしなければなりません

 

オウンドメディアでは、「多くの人に読んでもらえる入口づくり」と「読んだものを広めてもらう出口づくり」のマーケティング性が重要になっています。このようなマーケティング性が理解できなければ、オウンドメディアの性質に即した記事づくりから外れてしまうことがあるため、Web系の編集プロダクションは従来の「編集」領域を超えた知識や技量が必要ともいえるでしょう。

これからの編プロは3つの“Pro”が必要?

 

読み物は年々、紙よりもWeb媒体での需要が増しています。それに伴い、Web業界では記事の競合性が高まっているため、オウンドメディアは品質が高くなければ生き残ることはできません。これからの編集プロダクションには、オウンドメディアの品質を高めるために、書籍とWebの強みを融合させた3つの“Pro”要素が必要だと考えています

 

  1. Production(つくりだす)
  2. Professional(プロ・専門)
  3. Profitability(収益性)

 

クラウドソーシングの台頭に、よって素人まがいのライターが増え、低品質の記事が増えてしまいました。これは、企業にとってはよいことではありません。Webでも書籍の世界で活躍しているような「Professional(プロ・専門)」による文章が必要です。また、執筆と編集によって出来上がったものだけで収益につながげるられないWebメディアには、企業の「Profitability(収益性)」の手助けができるマーケティングの知識と技量が重要になってきます。これからは、「Professional」と「Profitability」を生かした「Production」が必要なのではないでしょうか。

 


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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