編集・ディレクション

突然の継続依頼終了はクライアントの都合?本音はライターが原因?

長きに渡って続いてきた案件が突然継続終了!ライターを続けていればだれしもが経験することです。なかには、「長期継続」ではじめたのにもかかわらず短期間で契約終了になるケースもWebライティングの世界では珍しくありません。何にせよ仕事をひとつ失うことはライターにとってはショックなことです。

 

「社内の都合で継続終了となります」と先方から冷たい言葉をかけらることもあれば、「いままで大変お世話になったのですが予算の都合で……」と平身低頭な断り文句もありますが、いずれもライターに責任転嫁することあまりありません。案件の終了は本当にクライアントの都合なのでしょうか? 実は、体裁だけの言葉で実はライターに非があるなんてことは多々あります。今回は継続依頼終了の理由についていくつか考察してみます。

建前から自分の能力を勘違いするライターは多い

「あなたの質が悪いので仕事はしたくありません」とはっきりいうクライアントはなかなかいません。日本人は本音と建前をうまく使い分け、できるだけ波風を立てずに仕事は終わらせたいと思う傾向にあります。そのため、案件の終了の本当の理由を明かさないことの方が多いでしょう。

 

修正の指示がなければ、納品した原稿はクライアントに満足してもらえていると思い上がるのは早急です。クライアントからすると「もう少し高いクオリティを求めたいけど予算からすると妥当かもしれない」と妥協から口を閉ざしていることもあります。

 

しかし、本音を聞けないライターからしてみれば額面上の言葉だけを信じるしかありません。そのため、仮にライターに問題があってもその原因に気づけず、クライアント側の問題だと決めつけて自らの省みることをしなくなります。相手の言葉の裏側には実は何かが隠されていて、契約終了を回避する手立てがあるかもしれないのです

クライアントによる都合の場合

問題が実際にクライアントにあるケースは当然ながら多々存在します。実際Webの世界は移り変わりが激しく、Googleのアップデート次第で突然サイトが閉鎖寸前に追いやられるケースもあります。「社内の都合」と卒ない言葉の裏側には次のような実態があるかもしれません。

発注先の問題

担当者は継続したいと思っていてくれたとしても、社内や上司の都合でやむなく記事を発注できなくなることがあります。ライターに内情を話す義理がないことや、伝えることでライターを傷つけてしまうことから「社内の方針転換」と曖昧な一言で済ますこともあります。

 

この「方針転換」の具体的な内容はたとえば、編集プロダクションにまとめて発注することになったので管理の都合上やむなく個人ライターへの発注を打ち切るなんてことも。また、社内の人間で記事制作をする手筈が整ったためわざわざ外部発注する必要がなくなったなんてケースもあります。

予算の問題

メディアの運営には当然予算が必要となりますが、予算の捻出の仕方は企業によってさまざまです。広告で収益を得ている場合もあれば、出資元からお金を頼りにしている場合もあります。つまり、その財源が途絶えれば、ライターへお金を流す余裕はなくなるわけです。

 

収益度外しで会社のイメージアップのためにメディア運営をする企業もあります。しかし、企業の業績ダウンすると、社内はコスト削減を迫られます。そうなると、収益に直結しないメディアは不要になる可能性は高くなります。また、長期契約を結んでいないライターは真っ先にコストカットの対象にもなりやすいことも知っておくといいでしょう。

決算期の問題

最初から短期発注と明記すると応募してくるライターの数も減るため,継続の余地を残した表現で募集をかけるなんてことは珍しくありません。しかし、その実態は、決算期に合わせて余った予算を消化するための多めに短期発注なんてことも。決算期を3月と12月に設定している企業は多いの、この直前に受けた仕事はもしかするとすぐに終わる可能性もあります。

 

また、編集部としては継続発注の意志があったのにもかかわらず、社内の都合で次年度の予算を確保できず終了する場合も。3月を決算期にしている企業は7割程度といわれているので、特にこの時期は仕事の変化が起きる心構えをもっておきましょう。

ライターに問題がある場合

質の問題

ライター側の問題として可能性が一番高いのは「原稿の質」でしょう。具体的な修正依頼に対して何度も改善できなければ案件終了も納得できるかもしれません。しかし、記事の質の問題とはいえ、発注者が無言で契約を打ち切る場合はあります。たとえば、以下のようなケースが考えられます。

 

  • 質が悪いものの低単価案件のため申し訳なくて修正依頼を出せない(編集部で直している)
  • 同じ単価でより高品質な記事作成をするライターが現れた
  • 担当は問題ないと感じていても新たな上司が納得しない

 

移り変わりが激しいWebの世界では、知らないうちに編集部の方針や体制が変わっていることが珍しくありません。それに伴って、求められるクオリティが自然と上がり、いままでの質だとNGの烙印を押されるケースも存在します。

工数の問題

必ずしも原稿のクオリティが高くなくとも、工数がかかってしまい、コストに見合わない発注になってしまうことがあります。あまりにも打ち合わせが必要でコミュニケーションコストがかかってしまう。計画や骨子作成の段階の修正が多い。納品方法や業務連絡での度重なるミスをするなど。

 

なかにはクライアントが是正できる業務もありますが、ライター側から提案して改善できるものは少なくないでしょう。ライターは自分のコストだけを考えがちですが、相手の時間を奪うことは結果的に自分の首を絞めることになる可能性があることを肝に銘じておきましょう。

コミュニケーションの問題

クライアントも人間なので、コミュニケーションで不快や不安な思いをさせられてしまうライターとの仕事は避けたいものです。不躾な言葉をかけるだけでなく、レスポンスの遅さなどもクライアントを不安にさせてしまいます。誰もが書けてしまうような案件であれば、なおさら気持ちよく仕事をするために新たなライターに発注をしたくなるものです。

 

また、卒のないコミュニケーションを取っていたとしても、「楽しさ」や「安さ」から他のライターに乗り換える編集者もいます。同じ能力のライターが2人いたとして、安価に発注できるライターや仕事のモチベーションをあげてくれるライターがいるとすればそちらに切り替えてしまうなんてことも。クライアントといえど人間です。案件を繋ぎ止めておくためにもクライアントと懇意にしておくといいでしょう。

他責にせずに研鑽する気持ちを持つ

本当にクライアントの都合で案件が終了してしまったとしても、甘んじてしまえば自己成長はありません。あなたにもっと力があれば回避できた事案かもしれません。どうすれば、仕事を長く続けられるかよく考えてみることは大切です。

ライティング以外の能力を磨く

ライターとしてライティングだけでなく、マーケティングやマネジメント能力を身につけることができれば沈みかかったメディアを救えるかもしれません。マーケティング能力があればメディアの認知度を高めて収益につなげられます。マネジメント能力があれば、工数削減や体制変更からコストダウンを図ることだってできます。

 

営業力があればなおさら最強です。メディアに掲載できる広告を取ってきてくれるライターがいるとすれば企業は手放すはずがありません。ライティング以外の能力があればライターとして生き残れる可能性はぐっと上がってきます。

チャンスを無駄にしない

事細かに修正や指摘をしてくるクライアントとの出会いはチャンスです。自分の悪い部分を改善してくれる人がいるのであれば、むしろ率先して何がいけないのか、どうやったら良いものになるか聞いてください。

 

通常スキルアップをするためには、お金を払うのが常です。それをお金をもらいながらできてしまうのであれば、この上ない幸運だと気づいてください。危険が浅いうちから修正や指摘が面倒だのうざったいだの思うようであれば、すぐにライターを辞めた方がいいでしょう。

積極的なコミュニケーションを試みる

本音と建前を使い分けるのは、相手との距離感があるからです。その距離感が縮めることができれば、建前が本音に変わってきます。クライアントと気軽に話せるようになれば「実は〇〇さんの文章はぶっちゃけここがダメなんです」と指摘してくれることもあるでしょう。

 

コミュニケーションをうまく図ることができれば、さまざまな情報を入手できます。編集の仕事、メディア運営の仕方、業界の構造などを知ることで、新たな仕事に踏み出すためにきっかけになるかもしれません。ライターにとって、知識や情報を収集することは記事を書くときだけでなく、ライターとして生きていくためにも重要なのです。

 


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
ブログ一覧へ戻る
お問い合わせバナー
お問い合わせバナー2
LINEバナー