編プロの仕事

編集・翻訳協力した『クリティカル・シンキング』が出版されました

当プロダクションで編集・翻訳協力を担当した『クリティカル・シンキング』(ニュートンプレス)が出版されました。

 

「クリティカル・シンキング」は、情報の正しさや物事の本質を見極めるための思考であり、世界的に注目されている学問のひとつです。政治家、管理職、教育者、文筆業などには特に求められる思考法といってよいでしょう。クリティカル・シンキングの教育が遅れていると言われている日本で、貴重な1冊ができあがりましたので、その内容の一端を紹介します。

本書について:”思考する”全ての人に読んで欲しい書籍

2020年は新型コロナウィルスや大統領選を発端として、フェイクニュースや不確定な情報がSNSを中心に飛び交いました。ソースが定かでない情報に煽られ、感情的になり、暴動や不用意な買い占めに走る人々の姿は記憶に新しいでしょう。なぜ、人々は曖昧な情報を信じ込み、確認し、拡散してしまうのでしょうか。それは、「正しく情報を吟味して推論する思考力=クリティカル・シンキング能力」が欠けているからに他なりません。

 

本書では、基本的な三段論法やレトリックだけでなく、本質を見抜くために多くの人が見落としがちな推論方法などが図を用いて説明されます。思考法の知識だけでなく、教育者として生徒や部下にクリティカル・シンキングを教えるための手法なども書かれている書籍です。いままで日本で出版されている「クリティカル・シンキング」関連の本にも記述されていない、最新情報も多々網羅されている貴重な1冊になっているのではないでしょうか。

プチ編集後記:私の財産になった本

 

編集として携わらせてもらいましたが、ここ数年で一番勉強になった本かもしれません。年を重ねるにつれて本で大きな知恵を得る機会は減っていくものですが、この『クリティカル・シンキング』は、執筆・編集業をする私にとっては大きな財産となりました。正しく推論・思考する重要さに感嘆するのと同時に、大半の人間はまともに思考できていないという気づきによって嘆息する自分がいました。

 

思考力の面において人類は、アリストテレスの時代から大して進歩していません。一義的で無責任な政治・政策。一面的にしか物事を捉えられない人々による罵詈雑言。あさましい情報がテレビとスマホを往来する世の中に一矢報いるとするのであれば、経済的な豊かさよりも先に人間の思考力にフォーカスしなければならないのではないでしょうか。この書籍が売れる売れないにかかわらず、クリティカル・シンキングが多くの人に認知され、健全な思考を持ち主が一人でも増えることを切に願っています。

監修を務めていただいた若山昇先生には大変お世話になりました。細かい言葉の定義や表現方法についてまで議論を交わすことができ、とても有意義な時間となりました。日本社会に意義深い本が刊行されたのではないでしょうか。先生や訳者をはじめ、関係各位の皆様には心より感謝申し上げます。

 

『クリティカル・シンキング』

第1章「クリティカル・シンキング」の系譜
・クリティカル・シンキングの哲学
・ルネサンス,科学革命,啓蒙時代
・心理学とプラグマティズムほか

第2章クリティカル・シンキングの組み立て方
・思考の組み立て方
・論理形式における定義と特徴
・アリストテレスの三段論法
・論証の図式化(可視化)
・言語能力とクリティカル・シンキングの関係
・情報リテラシー
・クリティカル・シンキングの三要素ほか

第3章クリティカル・シンキングをどう定義し,教え,評価するか
・個人型の思考 vs. 集団型の思考
・クリティカル・シンキングを俯瞰すると
・クリティカル・シンキングをどう教えるか
・「意図的な練習」の必要性
・ケーススタディほか

第4章クリティカル・シンキング志向の世界を目指して
・クリティカル・シンキングを教える側の5つの重要ポイント
・家庭における三つの重要ポイント
・「クリティカル・シンキング」文化の創生に向けて

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発行:2021年5月15日

出版社:ニュートンプレス

著者:ジョナサン・ヘイバー

監修:若山昇

訳者:寺上隆一(編集プロダクション雨輝)

翻訳・編集協力:編集プロダクション雨輝


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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