ライティング

読書嫌いの大人が日本語の語彙力を上げる方法

ビジネスメールや社内報、資料作り。まともに国語の勉強や読書をしてこなかったのにもかかわらず、仕事で文章を書かなければならない状況を強いられることがあります。同じような言い回しの繰り返しで、幼稚な文章になってしまうと頭を悩ませたことはないでしょうか。近頃は、Webライターからも「語彙力不足」の悩みを受けることがしばしばあります。

 

「語彙力を増やしたい!でも読書はあまり好きじゃないんです!」と贅沢な要望もあるのですが、気持ちはわかります。かくいう私も、そこまで多くの本に触れてきたというわけではありません。どちらかというとテレビや映画を見て育ってきたので、本を読むと眠くなる人の気持ちはよくわかります。私自身、語彙の多くは「本以外」の世界で学んできた自覚があります。今回は、読書以外で語彙力をあげる方法をいくつか紹介します。

人類は文字がなくとも言葉を学んできた

 

各方面の研究では、読書量と語彙量が比例することはわかっています。そのため、読書をした方が語彙力を身につけやすいのは確かです。けれどもそれは、読書そのものに意味があるというよりは、単にさまざまな情報を脳に入れる機会が多いとも考えられます。言葉と文字は密接に関係していますが、読み書きができない人は世界ではいまだに多く、そもそも古来の人々は文字を使わずとも意思疎通を図っていました。

 

日本最古の歴史書『古事記』が生まれたのはせいぜい1300年ほど前。それまでは、主に口頭伝承によって歴史や物語は人から人へと語り継がれていました。つまり人類は、文字ではなく、口を使って耳で言葉を学んできた歴史のほうが長いということです。本を読んだとしても頭に情報が残らなければ意味はありません。それであれば、文字を読まずに、耳だけで語彙を身につけてもよいわけです。

耳から語彙を手に入れる

1.常に言語が入ってくる状況をつくる

読書嫌いは、勉強そのものがあまり好きでないかもしれません。そのため、語彙力のために無理に「学習しよう」と意識してしまうことで、ますます語彙を身につけることへの抵抗感が生まれてしまいます。

 

できれば、楽しく、自然な環境で言葉を身につけられるのがいいでしょう。そもそも、語彙を増やすこととは、自分の知らない世界に触れることからはじまります。代わり映えのない世界で生活しているからこそ、新しいことが身につかないのです。そのため、親しみのある媒体でふだんあまり縁のない世界に触れてみるところから始めるのがいいでしょう。

 

・テレビで語彙を身につける

手っ取り早いのはニュース番組です。ニュースがつまらないと思うのであれば、情報バラエティなど最初は少し敷居を下げるのもいいかもしれません。スマホでもニュースは見れますが、スマホの場合は自分が興味がある情報ばかりに目がいってしまいます。それでは、知らない世界の幅は広がらず、似たような単語に触れ合うだけです。

 

テレビのニュースでは、否応なしに自分が普段触れていない世界の情報が入ってくるので、知らない単語に出会う確率は高くなります。また、クイズ系番組であれば、楽しくストレートに知らない言葉を学べる機会が増えます。家事や運動をしながらでもいいので、耳から情報が入ってくる機会を増やすといいでしょう。

 

・ドラマや映画で語彙を身につける

そもそもドラマや映画には原作が存在するケースが多々あります。その原作は小説であることが多く、映像の場合は、地の文こそはないものの小難しい世界観が登場人物のセリフに反映されいることも。そのため、特に文学賞などを獲得している小説を原作とした作品からは、学びにつながる言葉は出てくるでしょう。また、映像作品で少し難しい分野になれることで、同じ分野のニュースや記事への抵抗も下がるため、自然と知識を身につける連鎖が生まれていきます。

 

・YouTubeで語彙を身につける

テレビと違ってYouTubeは、時間と場所を選ぶことができます。ながら視聴ができるのがYouTubeです。「耳で情報を得る」のであれば、ラジオ形式や解説形式のチャンネルがいいでしょう。できるだけ科学的な根拠をもとに配信している知識人や専門家が登場するチャンネルにしてしてください。理由や根拠を明らかにして配信しているYouTuberからは、論理的な思考の組み立て方も学ぶことができます。論理的な思考が身につけば、相手に伝えやすい文章や会話を身につけることもできるため一石二鳥です。

 

・朗読系アプリで語彙を身につける

読書嫌いは、能動的に文字を追うことが苦手です。つまり、受動的に情報が入ってくれば本の内容でもある程度受け入れやすくなります。音読系のアプリで小説やビジネス書などの朗読音声を聞くのはおすすめです。例えば、思想本や文学小説などは読書慣れしている人にも敷居が高いかもしれませんが、アプリを通して”耳で読めば”自然と身体に入ってくるかもしれません。通勤中やランニング中の音楽の代わりに朗読系アプリを使えば、語彙力だけでなく、教養も高められます。

 

・ゲームで語彙を身につける

ゲームも決してあなどれません。特に世界展開されているRPGなどのストーリーのある作品は高いドラマ性を誇ることが多く、日本でもそれに見合った高度な翻訳がなされています。日本ではドラマであれ、ゲームであれ、誰もが楽しめるようにつくられているため、使われる言葉が平易すぎる傾向にあります。欧米の作品(洋ゲー)では、複雑なドラマ性を盛り込んだ作品も多く、それに見合った翻訳や吹き替えもなされているので、ゲームをしながら新たに語彙を習得することも難しくはありません。

 

2.違う世代や業界の人と会話する

語彙力が高いは、知識も豊富です。知識が豊富な人は大手企業であったり、大学や高校に属していたりする”傾向”にあります。知識が豊富な人が所属している環境では、その分、多様な語彙で会話が展開されるわけです。つまり、語彙力とは環境や付き合う人間関係にも依存してきます。特に、知識を持った歳の離れた人の会話での学びは大きいです。もし、あなたが20代であれば、50代や60代の知識人と交流してみてください。座学が必要とされる政治や金融などの業界の人と触れ合うことでも、多く言葉を自身に取り込めるようにはずです。

 

新たなコミュニティに参加したり、交流会に参加したりできれば一番ですが、誰もがそういった環境に飛び込めるわけではありません。しかし、いまではTwitterといった便利なツールがあります。自分とは離れた世界の知識人たちのアカウントをフォローしてみてください。日々彼らのツイートを読むだけでも新たな言葉に出会えることでしょう。

 

3.取材相手から言葉を学ぶ

もしもあなたが語彙力に自信がないライターであれば、取材を通して言葉を身につけていく方法もあります。取材原稿は自分の言葉ではなく、相手から引き出した言葉で出来上がります。すなわち、質問力さえあれば、語彙力が乏しかったとしても相手の力を借りることで、立派なものが出来上がり、自然と学びにもつながります

 

取材相手は、できれば企業の広報や自身をPRしたい人がいいでしょう。言いたいことがある人は、こちらから掘り下げなくても言葉を選んで話してくれるので労せずに原稿がつくれます。また、語彙を得ることだけを目的とするのであれば、テープ起こしでも十分です。ライターとしての実力や自信がないのであれば、むしろ取材をする前にテープ起こしで、言葉や質問力を身につけるといいでしょう。テープ起こしだけの仕事だとしても、できればできあがった原稿を見せてもらってください。どのように言葉が変換し、整えられるかを知るだけでもライターとして力がついていきます

癖をつける

1.気になったらすぐに調べる

新たな言葉に出会ったとしても、その意味を知ったり、使えるようになったりしなければ意味がありません。知らない言葉を耳にしたときにすぐにスマホやパソコンで調べる癖をつけるようにしてください。何も一人で学ぶ必要もありません。子供と一緒に知識をシェアすることで、自然と教育にもつながっていきます。子供からの質問に対して「わからない」で済ませるのではなく、一緒に調べて学ぶことで、調べる癖もついて、言葉の引き出しも増えていくでしょう。

 

2.変換癖をつける

語彙力がないと嘆いている多くの人は、変換する力が弱いだけかもしれません。この記事では、「学ぶ」を「身につける」「力をつける」「学習する」「得る」「習得する」「取り込む」「引き出しが増える」などの言葉で表現してきました。いずれも大人であれば誰もが知っているような言葉です。難しい言葉をわざわざ覚えずとも、多様な表現は可能です。今自身が持っている語彙を変換するだけで、悩みは意外と解決るすかもしれません。自然と変換する力や癖が身についていないのであれば、連想類語辞典やWeblioの類語辞典などを活用してみてください。

学びのないルーティンから抜け出す

 

ここまで読んできた方はわかったかもしれませんが、語彙力の向上とは、知識と情報の積み重ねの結果です。知識と情報は、自分がまだ触れていない世界で身につくことを忘れてはいけません。毎日同じようなことを繰り替えすだけの生活では、知識や語彙がアップデートされないことに気がつきましょう。学びのない日々ルーティンから抜け出して、新しい言葉との出会いを見出してください。最初はテレビでもYouTubeでも構いません。知識を増やす楽しみを知れば、自然といろいろな手段で学びをえたくなるものです。気がつけば、読書が好きになるかもしれません。

 


投稿者プロフィール

編集長・清水
編集長・清水
編集プロダクション雨輝の編集長。文筆業一家に生まれ、初めて編集業務に携わったのは14歳。Webライターたちの質の低さに失望し、業界を底上げすべく2014年に編プロを設立。日々、Webと紙媒体の狭間で日本語にこだわり続ける。趣味は映画・ドラマ観賞と旅。海外ドラマを語らせたら三日三晩トークが止まらないので要注意。日本は1.5周済。ひそかに文学賞を狙っている。
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